私立学校の求人情報の分析のしかた

労働環境

応募に至るまでの第一歩。

それは求人票を見るところから始まります。

たくさんの求人票がありますが、私学の求人票は独特です。

最近こそ少しずつ情報公開しようという雰囲気が高まってきつつありますが、一般企業に比べればまだまだわからないことが多いのが現状です。

今回は私立学校の求人情報を見ていく時に気にするべきことを考えていきます。

まずは基本条件の確認を

年齢制限の有無

求人票をずっと見てきて、年齢制限を設けている学校は一定数あります。

「継続勤務によるキャリア形成の観点から、採用時30歳以下の方の応募に限ります」

というような表記も見受けられます。

もちろん、学校によって線引きは様々で、35歳で線を引いている学校であれば、40歳まではOKという学校もあります。

ちなみに、この線引きも絶対のものかと言われれば、必ずしもそうではないと思っています。

年齢に勝る経歴があるとか、考慮される要素は多々あると思います。

下手な採用をして学校が機能しなくなるくらいだったら、年齢制限を少し甘くしてでも優秀な人材を確保する学校が多いと思います(私がいた学校はどこもそうでした)。

実際にあった話

私が最初に勤務した私学では、年齢制限をかけて募集をしていました。

やはり「30歳程度」というラインですが、厳密ではなさそうな雰囲気が伝わると思います。

ここで同期として採用されたのは、なんと40歳前半の中堅の方。

私学としては貴重な広報経験者、また教務主任経験者ということもあったと思います。

もちろん、厳密に年齢で線引きをしている学校もあると思いますが、どうしても働きたい学校があったらダメ元でも履歴書は送ってみてもいいかもしれません。

また、逆に定年の年齢(60歳だったり63歳だったり65歳だったり)を明記しておいて、数年凌ぐための求人かな、と思うようなものもありますね。

そんな求人に需要があるのか、と思う方もいるかもしれませんが、実はあるんです。

公立高校を定年退職した方に最後にもうひと花咲かせてもらおう、というタイプの求人です。

学校側とすれば、教員としての型も出来上がった、育成の必要がない方を雇用できるわけです。

応募する側としても、公立校の再任用の給与体系ではなく、それぞれの私学の給与体系に乗せてもらった金額を賃金としてもらえるわけですから、ある意味ではウィンウィンの関係になります。

私が知っている公立校の再任用の先生は「仕事はそのままでお給料は1/3になったよ」と冗談まじりに言っていたのを覚えています。

公立校に執着が無いのであれば、公立校で定年退職をした後に私学で数年間勤務する、というのは特にこれからの時代は増えてくるのかもしれませんね。

必要な資格と専門性

まず要求されている教員免許の種別は確認しましょう。

専修免許を指定している学校は、私が転職活動を行っていた頃に比べると激減しました。

基本的には免許の種類を指定していないことも多いように思います。

少し微妙なのが2種免許。

隣接校種などを使って取得した場合に2種免許を所持している場合もあるかと思います。

はっきりと「1種免許または専修免許」と書いてある学校もあります。

絶対にダメなのか、と言われるとそれは学校次第だと思います。

また、免許以外に求められる資格として多いのが英語系の資格

TOEICで大丈夫なのは中堅校までで、上位校はTOEFLやIELTSなどの資格を求められる場合もあります。

英検ならば1級(最上位校)や準1級(中堅~上位校)は当たり前という感じです。

また、教員免許の発行枚数が多い社会科で顕著なのは、自分の専門以外の免許もどれだけ取得しているか。

中学社会の免許も取得していることが条件になっていたり、地歴公民のすべてを取得していること、という制限を設定している学校は少なくないです。

これはもちろん、校内人事を考えた時に配置がしにくくなるため仕方ありません。

教科の中の専門性という観点では、体育で「柔道の指導ができる方」とか、音楽や美術で何らかの専門性を求められることもあります。

その他では、早慶レベルの附属校になると、自分の論文著書などの実績も求められるようになりますね。

待遇について念入りに確認する

基本情報について

おそらく皆さんが一番気になっている箇所ではないでしょうか(笑)

基本的には、交通費とか、各種手当てなどはどこの学校も大差は無いと思っています。

専任教諭の場合は、私学共済への加入や住宅手当など、福利厚生面でも特に気にすることは無いと思います。

ただし、求人票の上では書いてあったのに、実際に勤務すると実はどちらか選択性だったということもあります。

実際にあった話

私が勤務していた2校目の私学での話です。

首都圏エリアの某県での話なのですが、放課後に別の先生と待遇についての話をしていました。

その方の前任校では、求人票にも「住宅手当」と「交通費」は明記されているにも関わらず、なんとどちらか一方しかでないという話でした。

もちろん当時の話で現在は変わっているかもしれませんが・・・

逆に注意深く読み込んだほうがいいのは常勤講師・特任講師などの勤務体系や非常勤講師でしょう。

常勤講師や特任講師であれば、副担任としての仕事はあるのか、担任をもつこともあるのかは絶対に確認すべきところでしょう。

負担が明らかに変わってきます。

専任教諭への登用ありの求人や、学校内の台所事情が厳しいところは、いきなり担任を持つことももちろんあります。

担任の可能性について明記があるのかないのか、副担任までとはっきり明記されているのかは学校によります。

そもそも副担任をあまり置いていない学校もありますし、1クラス2人担任制(片方は副担任)のような手厚い学校もあります。

担任以外での大きな仕事は部活動の指導でしょう。

これに関しては、大半の学校が「部活指導も含む」と書いてあることが多いと思います。

もっと念入りに確認しなければいけないのは非常勤講師です。

給与のベースになるコマ給についてはもちろんそうです。

このコマ給についての計算方法も学校によって少し違っていて、「12ヶ月で均等に割っているから祝日で授業数が減っても月給のように支給される」学校と、「授業をした回数に応じて支給するので祝日で授業数が減ったらその分減額される」ような学校があります。

こういう細かい内規については入ってみないとわからないのが実情です。

学校の雰囲気などから、どれくらい労働環境を優遇してもらえそうなのかを察するくらいしかないのではないでしょうか。

このような給与体系なので、基本的に担任業務や部活動の指導は無いと思っているのですが、今年求人票を見ていて、どこかの学校が非常勤講師にも部活の指導あり、という記載がありました。

そもそも部活の指導をするしないを選択できるのか、した場合にはコーチ代などの手当が正当に出るのか、などの記載までなかったので読み飛ばしましたが、まさか非常勤講師の業務の一部に部活指導が組み込まれていることはないよな、もしそうならば間違いなくブラックだろうと感じた記憶があります。

また、私学共済への加入を非常勤講師に対しても認めている学校もあります。

主に都内の学校で一定の条件を満たした場合に認めているケースがあると感じていて、近隣の県ではあまり聞かないように思います。

このあたりも都内の私学の人気が高くなる理由の一つかもしれません。

私が経験した学校の条件は「勤務日数が4日以上、または勤務日数が3日以上かつ持ち時数が10時間以上」というような条件を設定していました。

この条件を満たしたので非常勤講師で勤務していた年でも私学共済に加入させてもらっていたことがありました。

もちろん、必ずこういう条件が設定されているということはありませんし、勤務してみないとわかりません。

一時金(ボーナス)について

こちらについては明記されている学校も増えてきた印象です。

有名なところで行けば、都内の超名門男子校である開成中学校・高等学校のボーナスは年間6.0ヶ月ですね。

2020年度の求人票に掲載されていました。

もちろん、雇用形態によって支給される月数も異なってくるのですが、都内で常勤講師以上の身分であれば、多くの学校が4ヶ月台後半以上を支給していると思います。

5ヶ月台の学校が一番多いと思いますが、6ヶ月以上支給している学校もかなり多いと思っています。

その一方で、稀に見かけるのが2~3ヶ月台の学校。

いくつか知っています。

私が公立校で勤務していたときに公立校のボーナスが4.05とか3.95だったことを考えると、私学のボーナスは一般的には多いということになると思います。

情報公開も進みつつあるように感じていて、今まではボーナスも何も、金銭的な待遇については「学校規定による」という表記が多かったと思います。

しかし、今年みかけただけでも開成中学校・高等学校の6.0ヶ月を始めとして、春日部共栄中学高等学校(埼玉県)で5.7ヶ月(初年度は4.5ヶ月)、昭和中学校・高等学校で5.1ヶ月(初年度は換算と記載されていた)、十文字中学・高等学校(東京都)で5.0ヶ月(初年度についての記載はなし)とありました。

ボーナスは勤務していた期間が支給対象になるので、夏のボーナスが初年度は4~6月分に対してのみ計算されます。

そのため、夏のボーナスが満額支給されるのは勤務2年目以降になりますね(夏のボーナスは1~6月の勤務に対して支払われる)。

ただ、初年度の換算月数についても記載されるようになってきている風潮を最近感じます。

また、非常勤講師に対するボーナスの記載をする学校も増えてきました。

よくある学校としては、夏0.5~1.0ヶ月冬1.0ヶ月というものでしょうか。

各期に「寸志支給」というような記載の学校も今年の求人票で見かけました。

もちろん、ボーナスを支給していない学校もあると思いますし、記載がなくても支給している(例えば「本校規定による」の中に含まれている)学校もあると思います。

モデル給与を提示している学校も!

最近の新しい流れとして、モデル給与を提示する学校が出てきたなと思っています。

今年の求人票でみかけたものでしっかりした記載があったのは朋優学院高等学校(東京都)でしょうか。

☆専任教諭の場合
22歳年収420万円
25歳年収530万円
35歳年収820万円
※ボーナスは6.0ヶ月

☆専任講師の場合
22歳年収380万円
25歳年収450万円
35歳年収570万円
※ボーナスは5.6ヶ月

この学校の場合、専任教諭と専任講師で明確に業務に差を設けているのだと推測しています。

(私が忘れているだけで担任をもつorもたないなどの記載があったかもしれません)

同じ専任でも教諭と講師ではっきりと待遇に差をつけて情報公開しています。

このように何歳でおよそ何万円というようなモデル給与を提示する学校が最近増えてきています。

今までは初任給のみを公開している学校が多かったのですが、その後の伸び方がわからないためあまり意味を成していないことの方が多かったです。

このような情報公開はまだまだ始まったばかりというのが私学の求人票の現状です。

次ページは休日について!

コメント

タイトルとURLをコピーしました