早稲田大学の試験科目変更から考える私学の教員採用への影響

学校研究

先日、私立大学の志願者の最終速報が発表されました

早稲田大学が50年ぶりに10万人を割り込んだ、というのが各社の記事の見出しにちらほら見られます。

本日取り上げる記事はこちらです。

私大志願者最終速報 早大が50年ぶり10万人割れの衝撃 数学必須化の影響甚大…来年度以降のコロナ対策でも明暗(夕刊フジ)

他にも、以下のような記事も出ています。

早稲田10万人割れ、軒並み志願者減 今年の私大入試は「改革」「コロナ」が影響(大人んサー)

早稲田志願者10万人割れの「衝撃」 私大入試に激変、入試改革影響か(朝日新聞EduA)

記事の内容が端的で、今回話題にしたい内容が盛り込まれているのは夕刊フジの記事になりますので、そちらをご確認くださいませ。

そもそも2021年度大学入試の私大志願者の全体的な傾向

今年の受験生はとにかく巻き込まれた感じが強い年になりました。

・英語の入試制度改革

・大学入学共通テストの最初の学年

・コロナ流行による長期休校の影響

最後の長期休校に関しては、上位校ではむしろ自宅学習が捗って、かなり学力を伸ばすことができた生徒がいたようです。

その一方、学習リズムを崩したり、自宅にこもりっきりの生活で心身に不調をきたしたりした生徒もいたと思います。

また、センター試験が共通テストに変わったといっても、出来る生徒の点数はそんなに変化しなかったとも言われています。

私立高校にとって、やはり合格実績は何よりもわかりやすい指標です。

ただこの数年、私立大学は定員厳格化の流れがありました。

その結果、上位の私大だけでなく、中堅の大学も難化が言われていました。

今年はこれに加えて、私大の合格実績の目玉でもある早稲田大学の文系の学部のいくつかで、大学入学共通テストの受験を必須とし、数学Ⅰ・Aを必須科目とする変更がありました。

一人の日本人としては、この改革には正直大賛成です。

この国の将来を左右する若者に、内容を教授するのに必要な学力をきちんと要求するということですから。

大学は遊ぶところではないはずです。

しかし、この変更の影響が大きかったのか、政治経済学部の志願者数が前年度から38%減少したとのことです。

同様に青山学院大学でも、入試方法を変えた方式では43%も志願者数が減少したという報道もあります。

もともと私大そのものに難化傾向があり、安全志向になりがちだったところに、コロナの影響で地元志向も強まるということはあったでしょう。

しかし、肝心なのは大学入学共通テストの数学Ⅰ・A必須化の部分です。

今年の入試制度の変更から考えられそうな教員に求められる能力

想像は難くないと思うのですが、一応列挙してみます。

文系生徒への数学の指導力

直接的ですが、これが一番でしょう。

私学によって授業の設置のしかたが変わってくるので、それぞれのカリキュラムに応じてできること、やれることがあると思います。

単位数が少ないなら少ないで、どこをどのように工夫するのか。

コストパフォーマンスの上げ方が単純に求められる場合もあるでしょう。

理系とは異なり、どんなにやっても数学Ⅱ・Bまでしか扱えない文系ゆえに使えない解法もあるでしょう(といってもⅠ・Aまでだとそこまで差は無いか?)。

パターン暗記で精一杯なのか、その上を目指すのか、レベルと状況と単位数とを見据えた授業デザイン力が求められるかもしれません。

進路指導力

最終的に勉強するのも受験するのも生徒ですが、適切なタイミングで適切な方向性の指示が出来るかというところも大切でしょう。

今現在教員をやっている人の教員で、文系科目の担当で自分が高校生の時に数学も一定レベル以上取り組んだという方はそんなに多くないような気がします。

そもそも数学が必要だったのは一部の大学だったと思います。

進路指導の面談をする際に、ただ単純に偏差値や模試の結果など数字だけの話で終わることもあるかもしれません。

ただ、いつまでにどれくらいはできていないといけないというような、受験勉強における時期的な話なんかは担任のレベルで気づいて指摘しなければいけないこともあると思います。

学校法人の対応力

カリキュラムが変わるにあたって、単位数の様々な調整が行われていると思います。

その設定だけでなく、選択科目をどの程度柔軟に設置しているのか、あるいは今後設置する心づもりがあるのかも試されているのかもしれません。

学校全体に関わるような大きな単位数の変更はできなくても、臨時的に習熟度授業を設置したり、選択の幅を広げたり、それに伴う人員を確保したり、柔軟に立ち回れるかが求められそうです。

もちろん、これを実現させるだけの学校規模だったり(生徒数も教員数も)、経済力だったり、発想力だったりも関係してくるでしょう。

で、これは一個人の教員に求められる力ではなく、法人の空気なのではないか、と思われるかもしれませんが、教員のレベルから要望を上げていくというか、ボトムアップというか、そういう観点で働き始めてから数年後に求められそうな力のようにも感じます。

さいごに

2021年の大学入試は大きな転換点を迎えたと思います。

これから始まる新カリキュラムとも相まって、教員に求められる能力も増えていくのかもしれません。

時代や変化に応じで、都度対応していくのはある意味で当然のことなのですが、大きな方針転換を迫られそうな数年間になるかもしれません。

それぞれの学校ごとに抱えている課題は様々だと思いますが、変化を求められそうなタイミングだからこそ、転職を目指す人にはチャンスにもなり得ると思います。

自分の強みを活かせそうな転職先を探すのも1つの力だと思います。

このレベル帯の学校ではこういう困難が想定されるのでそこでこういうふうに貢献できる、というような。

変化に敏感になり、対応できる教員になりたいものですね。

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