学校を個々に分析する第4回はいよいよ東京都の私学。
バランスをとるために女子校にしようと決めていたので、今回は吉祥女子中学校・高等学校について考察していきます。
第1部は学校の概要について、各方面から集めてきた情報をまとめつつ分析していきます。学校行事も関連させて自分自身が採用された場合にどういうことに注意しなければいけないか(もちろん実際に採用されてみなければわからないことも多いですが)考察していきます。
第2部では学校の学力レベルから考えていきます。入り口や出口の部分に関連する入試はもちろんのこと、カリキュラムの特色、単位数の設定から教員側にどの程度の知識レベルと指導力が要求されるのか考察していきます。
第3部では学校ホームページから読み取れる情報と口コミサイトの情報で気になる点をまとめていきます。担任として働く場合に気になることも考察していきます。
第4部では過去の採用情報から遡って、採用情報の傾向や日程の傾向、選考内容についてまとめていきます。
もっとも、吉祥女子中学校・高等学校はかなり情報発信がなされていると思うので、拾いたい情報はたくさんあります。
特にデジタルパンフレットのGUIDEBOOK資料編はかなりの情報量がありました。
吉祥女子中学校・高等学校の学校概要
学校法人守屋教育学園
学校名がついている法人でもなく、大学関連の法人でもなく、どういう関連性があるのだろう?‥と一瞬思ってしまうような法人名ですね。
多くはないですが、少なくもない、創立者の名前と関係があるタイプの法人名のようです。
創立者は守屋荒美雄(もりやすさびお)、設立者はその息子の守屋美賀雄(もりやみかお)となっています(リンクはそれぞれwikipediaへ)。
創立者の 守屋荒美雄 は帝国書院を創設した人で、岡山県出身で地理・歴史に打ち込んだ方。
ちなみに、関東第一高等学校の創立者でもあります。
息子の 守屋美賀雄 は数学者(理学博士)として東京大学教授・上智大学学長を歴任した人物。
このあたりの内容は、学校ホームページの沿革のところに記載があります。
より詳しい内容はwikipediaを参照してください(それぞれリンクを貼ってあります)。
息子(次男)のほうのページに記載があったのですが、 守屋荒美雄 は洗礼も受けているという記載がありました。
学校のトップの写真にもVERITAS(ラテン語で真理)と書かれた施設の写真も掲載されています。
吉祥女子中学校・高等学校の教育理念
建学の精神は社会に貢献する自立した女性の育成という、他校でも似たものをよく見かけるようなものとなっています。
小項目が3つあり、知的探究心を育みましょう、言葉と行動に責任を持ちましょう、互いの価値観を尊重しましょう、となっています。
これらの小項目も似たようなものをよく見かけると思うのですが、面白いと思ったのは解説の日本語の下に英訳されたものが併記されている点(しかも英訳もしっかりしている)。
吉祥女子中学校・高等学校の場合は、教育理念として発信されている文字情報よりも、実際の教育内容を見たほうがいいようにも思います。
学校教育から見る吉祥女子中学校・高等学校(学校生活編)
学校行事
あくまでも受験する側、通学する側の目線ではなく、教員目線での話になることはご留意ください。
年間行事を見ると、富士吉田にある宿泊施設が関係する行事が多いように思いました。
まず、中1オリエンテーション。
これは4月にあるもので、入学直後に1泊2日で行われるもの。
行っている学校は少なくないと思いますが、決して多くもないと思っています。
高2・高3の理系生徒対象に、理化学研究所一般公開見学も行っていたりします。
その昔から理系に強い女子校、という呼び声も高いですが、もしかしたらその一端はこういうところにあるのかもしれませんね。
5月6月は大きな行事は特に無く、高校2年生の国内研修旅行(修学旅行)が設定されているくらい。
これについても、期間が学期中ということもあってか、2泊3日と控えめです。
他の学校であれば、もう少し長いような気もします。
場所が奈良・京都ということもあるのでしょうか。
7月には球技大会と中2・高1で林間学校が設定されています。
これは2クラスずつ行われ、中2は3泊4日、高1は2泊3日で行われるようです。
1学年に6~7クラスあるので、最初のクラスと最後のクラスでは1週間程度のタイムラグも生じそうです。
内容については、飯盒炊爨などもありますが、最大のイベントは登山でしょうか。
中2では三つ峠登山、高1は宝永山(2700m)となっています。
また、高2では希望者を対象に、富士山登山も設定されています。
富士吉田に学校施設があるからこその行事でしょうか。
2学期になると文化祭と運動会が行われます。
文化祭(中旬~下旬)と運動会(下旬)の間は1週間のようです。
10月は定期考査と中学3年のカナダ語学体験ツアー(1週間のホームステイ?)と中1・中2の校外学習があり、高1・高2は進路月間となっています。
時期としてもそれぞれ納得できそうなタイミングです。
中学生の校外学習は季節柄ちょうどいいです。
高校生は文理選択なども関係してくるので、この時期は進路学習に力を入れている学校は多いハズ。
12月は希望者対象に志賀高原でスキー教室も行われたりしますが、全体が関わる行事ではないですし、志賀高原のスキーは有名なので安心できるはず。
これは運営面でも教員の負担の面でも生徒の満足感の面でもです(学校独自で何かやるなら話は別だと思いますが‥)
1月になると中学生は1年生が百人一首退会、2年制が弁論大会となっています。
また、2月は中学全学年で合唱コンクールが開催されるので、中学生の担任の先生は3学期がもしかしたら負担は大きめかもしれません。
ざっと年間を通して見てきましたが、他校だと毎月のように行事がある(特に中学)ところもある中で、吉祥女子は精選されている印象をもちました。
ただ、その一方で夏にある富士吉田キャンパスが関連する行事は登山ももれなくついてくるので、同行する教員は大変かもしれません。
内部の専任教諭の内訳(男女比)はほぼ1:1とホームページに記載がありました。
女子校の宿泊行事中の男性教員の役割はできることは限られてきます。
男女によっても負担感に違いがありそうです。
施設・設備
吉祥寺の学校施設以外に、八王子にグラウンド、富士吉田にも宿泊施設を所有しています。
吉祥寺キャンパス
1号館から8号館まであり、それ以外にも北館や翔文館もあったりするようです。
- 1号館(普通教室・屋上庭園)
- 2号館(普通教室)
- 3号館(1Fに図書室・2FにPCルーム、進路指導室、物理室、中学理科室・3Fに生物室、化学室、淑美ホール・4Fに調理室と被服室)
- 5号館(1Fに視聴覚室とICTルーム・1F~2FにStudy Square・3Fにカフェテリア・4Fに普通教室)
- 6号館(1Fに吉祥ホール・2Fに音楽関連施設)
- 7号館(B1Fにアトリエとトレーニングルーム・1Fにカウンセリングルームと保健室・屋上にプール)
- 8号館(体育館)
その他、校舎内のつくりは古風な雰囲気もありながら古臭いわけではなく、中庭があったり、緑が多かったり、光の取り入れ方とかちょっとした曲線とか、好印象がもてます。
八王子キャンパス
八王子市にあり、秋の運動会が全校で行われます。
それ以外にもクラブの合宿やセミナーなど多方面に利用されているようです。
施設としては以下の通りです。
・グラウンド(200mトラック・観覧席・野球場)
・テニスコート(6面人工芝)
・祥成館
・クラブハウス
地図上で確認すると、高尾駅からほぼ真北に2kmほどという感じでしょうか(直線距離)。
富士吉田キャンパス
富士吉田市にあり、7月頃に行われる学校行事や新入生オリエンテーションに使用されます。
施設としては以下の通りです。
・祥風館
・祥友会館
・祥林館
・管理棟
Google Mapでは、吉祥女子中学高等学校富士寮とあるが、これが当該の建物か詳細にはわかりません。
一応、建物は4つあるようにも思います。
これが富士吉田キャンパスということであれば、富士山駅から南南西に1kmほどという感じでしょうか(直線距離)。
部活動
1つ特徴的なのは、生徒会活動のことも部活動と呼んでいる点。
教員目線で考えると、生徒会担当の先生は部活動をもう1つ担当しているようなものだ、という表現をされることも少なくないように思います。
この点も踏まえ、学校ホームページに掲載されている部活動を紹介します。
生徒会活動(部活動)
- 総務部
- 文化部
- 生活部
- 図書部
- 放送部
- 園芸部
- 保険部
- 体育部
- 出版部
- 吹奏楽部
- IT部
いわゆる委員会活動のようなものが含まれている印象ですね。
興味深いのは、IT部があることでしょうか。
クラブ・同好会活動(運動系)
- テニス
- ソフトボール
- 弓道
- バレーボール
- 卓球
- バドミントン
- 剣道
- サッカー
- 水泳
- ダンス
- スキー
- バスケットボール
- 陸上
クラブ・同好会活動(文化系)
- 文芸
- 演劇
- 英語
- 天文
- アフレコ
- 生物
- 科学
- 書道
- 写真
- 漫画研究
- 映画研究
- ボイスレスパフォーマンス
- ベーシッククッキング
- 軽音楽・フォークソング
- コーラス
- 歴史
- 競技かるた
- JRC(Junior Red Cross)
いくつか特徴的な活動が見られますね。
吉祥女子中学校・高等学校の独自の取り組み
教養講座・公開講座
夏休み前だったり、冬休み前だったり、土曜日の放課後だったり、希望者対象の講座を設定しているようです。
ものによっては自校で高大連携しているもの、外部の講義の紹介など様々なものがあるようですが、「社会(生き方)を知る」「職業を知る」「学問を知る」という3つの柱からなるプログラムという位置づけのようです。
2020 年度 教養講座およびセミナー 一覧
- 読売新聞社主催 医療オンラインセミナー「With コロナ 未来の医療を目指す君へ」
- Science Café at ICU 第 1 回(国際基督教大学)「物理学:研究って何するの?教育って必要なの?」
- Science Café at ICU 第2回(国際基督教大学)「化学:新しい化合物を生み出す着想は?」
- Science Café at ICU 第3回(国際基督教大学)「生物学・環境学:ものごとの繋がりに目を向けることの大切さ」
- 「鬼滅の刃 那田蜘蛛山編を学問する」(東京学芸大学)
- Google Mind the Gap in Japanese (Google 社 )
- Google Mind the Gap in English (Google 社 )
- 「株の力」(三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券)
- 【外部】東京農工大 GIYSE プログラム
- 【外部】東京大学「高校生と大学生のための金曜特別講座」 夏
- 【外部】東京大学「高校生と大学生のための金曜特別講座」 冬
- 【外部】ICU Global Challenge Forum
- 【外部】TGG(Tokyo Global Gateway) 英語プログラム
2019 年度 教養講座およびセミナー 一覧
- 「オリンピック精神を英語で学ぼう(all English)」(EF アカデミックディレクター)
- 「選手村について英語でプレゼンしよう(all English)」(EF アカデミックディレクター)
- 「フランス文化と歴史」(白水社編集者)
- Google 訪問&プログラミング研修(Google 社)
- 「『いのち』の倫理について考える」(早稲田大学)
- 「X 線で見る高エネルギー宇宙」(東京理科大学)
- 「一生ものの語彙力を身につけよう」(辞書編集者)
- 「外務省・外交官の仕事」(外務省職員)
- 「iPS 細胞から膵臓を作る」(東京工業大学)
- 「文学散歩」(本校教員)
- 「大学生シンポジウム」(本校卒業生)
KICHIJO GIRLS’ SCHOOL GUIDEBOOK 2022 【資料編】p.10・11より引用
大学と連携している講座でもちろん面白そうなものも多いですが、辞書編集者、外務省職員、Google、三菱UFJなど、名だたる企業や多様な職種についてのものが多いと思います。
教員目線だと、どのように運営されているのかはかなり気になってしまいます。
課外授業
いわゆる習い事とかお稽古ごとを、放課後を利用して学校内で行うもの。
試料によると、中学生の約23%、高校生の約15%が受講しているそう。
別料金ではあるものの、課外授業の講座も多彩です。
- ピアノ(担当する指導者は5名)
- 声楽
- ヴァイオリン
- フルート
- トランペット
- クラリネット
- ミュージックラボ
- 中学美術
- 高1造形
- 高2造形
- 高3造形
- 華道(草月流)
- 茶道(裏千家)
- 箏曲(生田流)
- 中国語会話
- 着付
- 日本舞踊(坂東流)
- バレエ
- 中3英会話
- 中学英語外部模試対策
- 高校英語外部模試対策
本当にお稽古ごとという感じですね。
指導者の名前はそれぞれ掲載されていますので、興味のある方は調べてみてくださいませ。
進路学習
学年ごとに行う内容が明記されていて好感がもてます。
年間目標も設定されています。
- 中1→社会と自分のつながりを考える-「環境」を手がかりに
- 中2→社会に貢献する生き方を考える-「福祉」を手がかりに(学問への興味・関心を育てる)
- 中3→ライフプランと職業間の育成・国際交流を考える(学問への方向性を固める)
- 高1→女性の生き方・職業観の育成・文系理系芸術系の選択
- 高2→学部学科の選定・第一志望校の設定
- 高3→進路目標の達成
また、具体的なプログラムも系統だっている印象です。
- 進路・生き方を考えるプログラム
- 教養や視野を広げるためのプログラム
- 進路ガイダンス
- 「吉祥進学」や「吉祥Express」等による学習方法・受験情報・進路行事報告等の提供
これらの活動も、レポート作成、プレゼンテーション、ディスカッション、ポスターセッションなどとアウトプットまで行うようです。
高校生になると、学年に応じて進路行事として設定しています。
感じるのは、この年代の生徒の目線にたって作り上げていくノウハウがしっかりしているということでしょうか。
学校教育から見る吉祥女子中学校・高等学校(学習編)
学年ごとに設定されている授業時間数だけでなく、使用教材についても全て明記されていました。
詳しく見ていきます。
国語
使用副教材に「吉祥読本」というものがあり、どのようなオリジナル教材なのか気になりますね。
ネット検索をかけると、少し情報は出てくるようです。
安岡章太郎、志賀直哉、山本周五郎などが収録されているみたいですが、このあたり、国語の先生だからこそ感じることはあるのではないでしょうか。
中学1年生では現代文3時間、古典2時間。
扱う教材は有名所(向田邦子、ヘルマン・ヘッセ、芥川龍之介、井伏鱒二など)。
古典の中ではっきりと漢文訓読の基礎を知るとも書かれています。
内容は百人一首、竹取物語、故事成語など、この年令だからこそという感じはします。
また、古典の授業内で口語文法を学ぶと書かれているので、現代文は主に読解主体なのでしょうか。
中学2年生では現代文3時間、古典3時間。
太宰治、安岡章太郎などの文章も扱うようですが、古典3時間だからこそできそうな内容も垣間見えます。
古典の中では文語文法(用言の活用)について学ぶそうです。
また、漢文の功徳についても学ぶということで、少しずつ、段階的に学習を勧めている様子が伝わってきます。
中学3年生では、現代文3時間、古典2時間に戻ります。
現代文の教材は井上ひさし、魯迅、山崎正和、養老孟司など。
古典は十訓抄、おくのほそ道、万葉集、古今和歌集、論語、史記など。
ここにきて、文語文法(助動詞)を学ぶ、漢文訓読に習熟する、となります。
高校1年生では、現代の国語と言語文化に分けられています。
カリキュラムの移行期なので詳細は未定となっていますが、他の箇所では国語総合(現代文2単位、古典3単位)という表記も見かけました。
発想としては、中学生の現代文を先行させるイメージなのでしょうか。
なお、文語文法(助詞・敬語)を学ぶという表記を見かけました。
自分が高校生の時に受けた授業から個人的には、助詞は知ればもっと読み込めるようになるものの、深入りするとかなり時間がかかるという印象を持っていますが、国語の先生はまた考えていることは違いそうです。
また、女子校という特徴ももしかしたらあるのかもしれませんね。
高校2年生では、文系と芸術系は現代文と古典が各3単位、理系は現代文と古典が各2単位となっています。
文理分けがあるわけですが、芸術系もあるのが特徴的です。
そして、芸術系も音楽系と美術系に分かれているのは興味深いです。
ただ、大学入試で求められることがあるのかもしれませんね。
高校3年生では、国分系と芸術系は現代文と古典が各3単位、私文系が現代文と古典各4単位、理系は現代文と古典各2単位となっています。
なお、デジタルパンフレットには、芸術系(音楽)は2022年度入学生から廃止され、音楽が選択科目になるという表記も見かけました。
数学
使用教科書として、体系数学を2まで使った後は数研出版の教科書を使うようです。
ただ、高校の数学Ⅰ・A・Ⅱまで中学生のうちから見えるのが凄いですね。
そうはいっても単元の並べ方を見ると理にかなっているような気はします。
副教材は体系数学準拠のPYXISで、高校の内容になってからはクリアーとFocus Goldを使用するとのこと。
学校のホームページには4STEPとなっていますが、新カリキュラムからは副教材のレベルを落とすのでしょうか。
中学1年生では数学が4時間。
あえて代数と幾何には分けていませんが、連立方程式、連立不等式、合同の証明、1次関数などまでが中学1年生の学習内容となっています。
中学2年生では代数と幾何に分け、それぞれ3時間ずつ合計6時間の設定となっています。
代数分野では、2次関数を高校の数学Ⅰの内容までやってしまうようです。
幾何分野では相似や三平方の定理まで。
気になるのはやはり高校の数学Ⅰを中学2年生を相手に学習する点でしょうか。
理解度はどれくらいなのでしょうか。
中学3年生では、はっきりと数学Ⅰと数学Aに分け、それぞれ3時間ずつ合計6時間の設定となっています。
三角比、論理と集合、式と証明、複素数と方程式、整数の性質を数学Ⅰで、場合の数と確率、データの分析、図形と方程式を数学Aで取り扱うとのこと。
教科書で取り扱う内容の順に、三角比の後に続けて三角関数はやらない方針みたいですね。
高校1年生では、数学Ⅰと数学Aという授業名でそれぞれ3単位ずつ、数学としては合計6単位の設定となっています。
ただ、扱う内容が数学Ⅰで残りの数学Ⅱの内容(指数・対数と微分積分)、数学Aで残りの数学Bの内容(数列とベクトル)になっています。
高校1年生が終わるまでに、数学ⅡとBまで終了しているということになりますね。
高校2年生では、文系は数学Ⅱと数学Bが各3単位、理系は数学Ⅱを4単位と数学Bを2単位という設定になっています。
芸術系は数学の単位は設定されていません。
気になる内容なのですが、詳細は記載がありません。
理系の単位設定はあくまでも想像ですが、数学Ⅱで数学Ⅲの内容を進めていき、数学Bで復習をしていくのでしょう。
高校3年生では、国分系は数学Ⅱ演習と共通テスト数学Ⅱのどちらか3単位と、数学B演習と共通テスト数学B演習のどちらか3単位の合計6単位となっています。
理系は、数学Ⅱ演習または数学Ⅲのどちらか4単位と、数学B演習または数学演習のどちらか3単位の合計7単位となっています。
数学に関しては、スピードがかなり早いものの、十分な単位数を最後まで確保している印象ですね。
なお、芸術系はやはり数学の単位は設定されていません。
英語
学校によって特徴がでる英語教育。
基本となる教材はZ会のNew Treasureのようです。
また、学校として買わせる文法の副教材は、中学3年生でいいずな書店の総合英語beのようです。
これとは別に、啓林館のRebised LANDMARK English Communicarion Ⅰも併用する模様。
中学1年生では英語5時間と英会話1時間の時間設定。
New Treasure1を使用しながら、現在進行、過去進行、未来表現まで。
中学2年生でも英語4時間と英会話1時間の時間設定。
New Treasure1と2を使用しながら、現在完了形や受動態まで扱うようです。
中学3年生では 英語4時間と英会話2時間の時間設定。
ここに来て、英会話の時間が増えています。
教材としては、New Treasure2の後に、LANDMARK Ⅰを使っていくようです。
高校1年生では英語コミュニケーションⅠを4単位と、論理・表現Ⅰを2単位という時間設定。
英語コミュニケーションの内訳は、日本人教員による授業が3時間と、ネイティブ教員による授業が1時間(英作文)。
論理・表現の内容は総合英語beを使って英文法を進めていくようです。
高校2年生でも英語コミュニケーションⅡを4単位と、論理・表現Ⅱを2単位という時間設定。
詳細な内容についての記載は見かけませんでした。
これは文系も芸術系も理系も共通です。
高校3年生では、英語コミュニケーションⅢを4単位と、論理・表現Ⅲを3単位という時間設定までは全員共通で、私文系のみ、私文総合英語演習が3単位追加されています。
学年共通で7単位、私文系は10単位ということになります。
理科
次の社会とあわせて、やはり特徴が大きく出てきます。
はっきりと中3で生物基礎を扱うということになっています。
また、高1の承伏教材で「高1物理基礎独自作成テキスト」「高1化学基礎独自作成テキスト」という表記が見えるのも興味深いです。
中学1年生では、第1分野と第2分野が各2時間の合計4時間という設定。
第1分野では、原子・分子まで含めて扱うので、公立校の1.5年分を扱っている印象です。
第2分野では、植物も動物も取り扱いだけでなく、火山と地震に加え、音と光も扱っています。
なお、イカの解剖も行うようです。
単元の内容の振り分け方が面白いですね。
中学2年生でも、 第1分野と第2分野が各2時間の合計4時間という設定。
第1分野ではイオンや化学結合を取り扱ったり、等加速度直線運動も取り扱っているようです。
はっきりと化学基礎、物理基礎の内容を取り入れながら発展的に学習という記載もあります。
第2分野では、気象と天体を取り扱いつつ、動植物についてやり残した分野を学習するようです。
中学3年生では、 第1分野と生物基礎が各2時間の合計4時間という設定。
第1分野といっても、化学基礎と物理基礎の内容がかなり導入されていそうです。
化学基礎ならばmolの手前までとなっていますが、物理基礎のほうは運動方程式まで扱うようです。
生物基礎は生物の多様性と細胞、生命活動とエネルギー、遺伝子とその働き、遺伝の規則性を扱うようで、いわゆる公立の中3で扱う遺伝の内容はこのタイミングで取り扱うように再構成しているような印象を受けます。
高校1年生では、物理基礎・化学基礎・生物基礎を各2単位ずつ合計6単位という設定。
物理と化学は中学の段階から戦略的に先取りをしているからこそ、高校1年生の段階で積み残しをすることなく基礎科目の最後まで余裕をもって終えられるようにも感じます。
高校2年生では、文系が化学基礎と生物基礎を各1単位、理系は化学4単位と物理または生物3単位の選択となっています。
文系は有無を言わさず化学と生物の2科目選択のようです。
高校3年生では、 国文系が化学基礎演習と生物基礎演習を各1単位、理系は化学4単位と物理または生物4単位の選択となっています。
理系の理科の単位数は、それまでのカリキュラム設定とあわせても、余裕があるように感じられます。
社会
中学1年生では地理2時間、歴史2時間。
地理では基本的なものの見方を勉強した後に、アジアとアフリカを中心に学習するようです。
歴史分野は日本史を室町時代まで。
中学2年生では地理1時間、歴史2時間。
地理はヨーロッパ、アメリカ、オセアニアなど残された地域を学習する模様。
歴史は残りの日本史を戦後まで仕上げるようなカリキュラムになっています。
中学3年生では地理1時間、公民3時間。
日本地理を学習していくようになっています。
公民は高校レベルの副教材を使用という記載があります。
同時に、高1で学ぶ公共と連携するようです。
高校1年生では歴史総合と公共が各2単位ずつ。
現行のカリキュラムでも世界史Aと政治経済が各2単位なので、カリキュラム改定と同時に微修正を加える感じでしょうか。
世界史は近現代史を扱うようです。
高校2年生では文系と芸術系(音楽)は世界史または日本史の選択が3単位と、世界史概説・日本史・地理の選択が2単位となっています。
世界史の負担も考えて、世界史のみ5単位ということもできるようにしてあるのでしょうか。
芸術系(美術)と理系は地理と倫理各2単位が設定されています。
高校3年生では国分系と芸術系(音楽)は世界史または日本史の選択が5単位、私文系が世界史または日本史の選択が5単位と、世界史または日本史の選択が3単位の合計8単位となっています。
芸術系(美術)と理系に社会の時間設定はありません。
ここまで見て、国立理系の生徒は共通テストの社会の勉強をどうするのか少し気になります。
高1から高2にかけて学習した政治経済と倫理で勝負ということになるのだと想像されますが‥
国立文系の生徒には、一応週1時間の理科基礎演習の時間が設定されていることを考えると、差があるようにも見えます。
ただ、国立理系志望の生徒の数を踏まえて授業設置が厳しいということなのでしょうか。
その他
芸術については、音楽と美術が設定されていて、書道の選択は高校でもないようです。
芸術系については、高校2年生でも高校3年生でも、美術ⅡorⅢを4単位、美術専門を6単位、美術・デザイン史を1単位と芸術に関連する授業が11単位存在しています。
家庭科は高校2年生で2単位、情報も高校2年生で2単位設定されています。
課外授業
設置されている夏期講習の数と種類は豊富な印象です。
高校3年生対象の夏期講習は、これくらいの種類と数が成立する学校はあるように思います。
高校2年生とか高校1年生はここまで設置している学校はそこまで無いのではないでしょうか。
夏期講習そのものは中学1年生から設置されていますが、面白いと思うのは中1~高2にまで設置されている答えのない問題に挑むという講座。
どのような内容なのか気になりますね。
外部模試
どの模試を受けるのか、明記されています。
中1~中3はベネッセの模試を年間2回、10月と2月のものを受けるようです。
高1・高2はベネッセを2回(7月と11月)、河合塾を1回(2月)受験するようです。
これ以外にどれくらい外部模試を案内しているのかはわかりません(駿台模試を紹介だけしているのか、とか希望者を集めて受験はしているのか、とか)。
高校3年生では、ベネッセを1回(10月)と、河合塾を5回(4月・5月・8月・10月・??)となっています。
吉祥女子中学校・高等学校の入試と偏差値
高校からの募集は行っていません。
完全中高一貫校になります。
中学入試の実施日は2/1(134名)と2/2(100名)となっています。
2021年度から、2/4の入試を行わないことにしたみたいですね。
それまでは2/1(114名)、2/2(90名)、2/4(30名)で行っていたようです。
入試回数を減らすということは、十分な合格者を確保できることの裏返しでしょうか。
試験時間と配点は国語と算数が50分で100点、社会と理科が35分で70点となっています。
なお、最後に5分ほどのアンケートを行っているようです。
四谷大塚の偏差値を表にしてみたいと思います。
入試回 | 80偏差値 | 50偏差値 |
2/1(第1回) | 62 | 58 |
2/2(第2回) | 64 | 60 |
なお、学校ホームページに掲載されていた入試の結果は以下の通りです。
入試年度 (入試回) | 出願者数 /募集人数 | 実受験者数 /募集人数 | 合格者数 /募集人数 | 最高点/最低点 平均点 |
2021年度 (2/1第1回) | 576/134 | 530/134 | 206/134 | 284/222 240.8 |
2021年度 (2/2第2回) | 906/100 | 616/100 | 210/100 | 290/226 245.0 |
2020年度 (2/1第1回) | 581/114 | 555/114 | 206/114 | 300/230 247.3 |
2020年度 (2/2第2回) | 959/90 | 680/90 | 208/90 | 320/253 271.9 |
2020年度 (2/4第3回) | 603/30 | 443/30 | 43/30 | 286/244 257.4 |
2019年度 (2/1第1回) | 601/114 | 571/114 | 233/114 | 311/243 259.3 |
2019年度 (2/2第2回) | 899/90 | 634/90 | 232/90 | 288/224 245.1 |
2019年度 (2/4第3回) | 589/30 | 387/30 | 35/30 | 287/240 251.6 |
実際に私立学校で入試問題を作成していたり、運営したり、採点したりしていると、感じることが多々あるのではないでしょうか。
第3回の倍率についてとか、最高点との兼ね合いとか、それでも第3回を取りやめる理由などなど。
好感がもてるのは、過去問を模範解答と配点付きでホームページ上で掲載していること!
著作権の関係で国語の掲載はありませんが、それでもここまで情報公開ができるのはすごいと思います。
問題にも目を通しましたが、どの教科も丁寧に作り込まれている印象です。
合格実績から見る吉祥女子中学校・高等学校
学校ホームページでは直近5年分の合格実績が掲載されています。
2019年こそ東京大学の合格者は0となっていますが、それ以外の年度では現役も浪人もそれぞれ数名排出しています。
北海道大学、東北大、東京医科歯科大、東京工業大、一橋大など、いずれも2桁には達しないものの、一定の合格者数を出し続けているように思います。
明確にやりたいことを意識させているからか、進路指導が巧いからなのかはわかりません。
私大の合格者はというと、慶應義塾が44(現役40)、早稲田が80(現役72)とかなりの高水準。
上智が45(現役43)、東京理科大が66(現役46)、学習院は14(現役9)、明治は104(現役88)、青山学院は40(現役38)、立教は90(現役83)、中央は87(現役73)、法政は89(現役67)と中堅私学の合格数も多い。
指定校推薦枠をもっている大学についても明記されています。
文系と理系の内訳も気になるところではありますが、パッと見で文系の合格者数で稼いでいるというわけでもなさそうに思ってしまいます。
卒業生の数に対しても、芸術系を設置していることを踏まえても、かなり凄いのではないでしょうか。
ホームページの作り込み方から見る吉祥女子中学校・高等学校
今までの学校分析記事の中でも情報量はてんこ盛りだと思います。
これはひとえに吉祥女子中学校・高等学校の情報公開が凄いから、の一言につきます。
ホームページは最近新しくなったような気もしているのですが(気のせい?)メニューはトップバーに5つ固定とトップページへのリンク。
動画を埋め込むようなタイプではないものの、大きめの写真のスライドショーを掲載。
その下に、写真画像つきのテーマ別のリンク。
最新記事を3×3でレイアウト。
下部にサイトマップ。
お問い合わせとアクセスが左側から少し顔を出している。
写真も数多く掲載されていますし、必要な情報へのアクセスもしやすい。
保護者の会も卒業生の会も運営されていて、更新もなされています。
学校内で行われている様々なプログラムも、進路指導も学習のカリキュラムについても、先述の入試問題の過去問と模範解答(配点付き)などにも現れているように、必要十分に情報が掲載されているように感じます。
内容を見ていると、デジタルパンフレットの資料編にまとめて掲載されている内容と文章が同じであることも多いように思います。
媒体による違いをそのまま切り分けて提示しているといえばいいのでしょうか。
本のように、冊子のように読みたい場合はデジタルパンフレットを読めばよくて、気になる情報にウェブ上でアクセスしたい場合にはブラウザでネットサーフィン形式で見るのがよい、というような感じです。
ただし、どちらも掲載されている情報は基本的には同じという。
とても秀逸に作り込まれていると感じます。
吉祥女子中学校・高等学校の口コミ
私が日頃使っているサイトでは都内の学校全ての中でも口コミがトップ10に入っているほど。
最近の投稿がそこまで多くないことは気になりますが、掘り返していくと、そもそもそんなに頻繁に投稿はなされていないようです。
他のサイトの口コミも確認しましたが、そこまで大きく不穏なものはなかったように思います。
教員として働いたとしても、気持ちよく働けそうな気はします(もちろん個人の合う合わないはあると思います)。
吉祥女子中学校・高等学校の採用状況
2020年度
私のブログを掘り返して、最初に見つかったのは秋の採用の情報。
11/5付の記事によると以下のような記載がありました。
10/30時点ではあった理科の募集がなくなり、そのかわりに家庭科の非常勤講師の募集が掲載されています。
応募締め切りは11/21
その次の更新を探したところ、12/20付の更新(その前から募集が掲載されていた可能性はある)で以下のような記載がありました。
養護教諭の非常勤講師を募集しています。
応募締切は1月12日となっています。
(1/22追記)
どこかで見逃していたようです・・・
理科と英語の非常勤講師を募集していたようです。
理科は生物基礎や中学2分野中心に8時間程度、週2~3でした。
英語も10時間程度、3日勤務可能な人、という条件でした。
応募期限が1月22日でした。
2021年度
今年に関しては、早々に専任教諭の募集がありました。
最初の募集は5/11掲載の物理の専任教諭。
春夏採用という感じでしょうか。
◆理科(物理)の専任教諭@5月29日応募締切 |
2022年度の教員採用情報。
物理の専任教諭だが、面白いのは中学校の第1分野を担当する可能性があり、中学の理科第1分野には物理基礎と化学基礎を含む、ということ。
(6/8追記)
◆英語の非常勤講師(週3日10時間)@6月26日応募締切 |
今年度(2021年度)の産休代替の募集。
採用期日は9月1日。
3日で10時間程度という、優しい感じの勤務。
次の募集は夏休み中の応募を促すタイプの時期のもの。
私自身が7/30付で情報を発信しています。
◆数学の専任教諭1名@8月30日応募締切 |
◆家庭科の非常勤講師1名@8月18日応募締切 ★9月1日付採用の今年度(2021年度)の採用情報 |
そして秋採用の波としてあったのが以下の募集。
私の情報更新日は10/4付となっています。
◆美術の専任教諭1名@10月30日応募締切 |
見ていると、基本的には1ヶ月程度の応募の準備期間は設定されているように思います。
再募集ということがなさそうな、上位校ゆえに余裕を持った採用活動もできていそうです。
立地条件から見る吉祥女子中学校・高等学校
住所は東京都武蔵野市吉祥寺東町。
最寄り駅はJR中央線・総武線・地下鉄東西線直通の西荻窪駅下車徒歩8分。
23区内ではないものの、三鷹の2駅手前、吉祥寺の1駅手前、荻窪より1駅離れているという状況。
三鷹の手前という意義があるかなと思われるのは、地下鉄を利用する場合に東西線直通とつながっているところでしょうか。
最寄り駅から徒歩圏内というのも大きです。
または西武新宿線の上石神井から西荻窪行きバスにて15分とあります。
上石神井も有料特急以外の電車が全て停車するという、アクセスがしやすい乗換駅なので西武線ユーザーも獲得できているのかもしれませんね。
生徒居住地も所沢市が28名、狭山市が7名、志木市が10名、入間市が5名ということですが、西武池袋線で所沢駅乗り換えを経てという通学経路もあるのだと思っています。
最も多いのは杉並区在住の生徒が230名ということで、都内23区はもちろんのこと、東京都西部(市部)、埼玉県からも生徒が獲得できているようです。
千葉県市川市が11名(総武線とか中央線で1本?)、神奈川県川崎市が12名(新宿乗り換え?)ということで、少し遠いように見える地区からでも、アクセスしやすい大都市圏限定になってしまうかもしれませんが、通学しているようです。