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名門男子校の算数は易しく、名門女子校の算数は難しくなった…中学受験の入試問題に起きている”異変”(3/16付プレジデント・オンライン記事)
3月は入学試験関連の総括の記事が増える時期です。これは私立学校にとっての入口である中学・高校の入学試験もそうですし、出口の大学入試の結果についても同じです。
この記事は入口側の入学試験についてのものですが、個人的には異変ではなく、ある意味では必然のようにも感じています。
実際に入試問題も作成し、合否を決定するプロセスに内側からも関わっているからこそ感じた点についても少しご紹介していきたいと思います。
記事の概要
世の中への興味関心の高さ
まずはざっくりとした記事の概要をご紹介。
大テーマは世の中への関心の高さを問う出題についてとでも言えばいいでしょうか。顕著な例として渋谷教育学園幕張中の社会科の問題が取り上げられていますが、理科に置き換えるなら実際の技術への応用例や身の回りの現象などでしょうか。
結局、社会だからとか、理科だからとか、特定の教科に集中しない現象でしょう。
勉強だけの生徒を求めていないという書き方が記事内ではされています。
男子難関校は易化したか
記事内では麻布中学校・高等学校の例が出されています。
往年の麻布は、さすが麻布、というような入試問題が毎年出題されていたのに、今年に関しては入試問題の作成スタッフが入れ替わったのではないかというレベルでいわゆる「普通」の出題が多かったとあります。
同様に武蔵についても3年ほど前から入試問題の傾向が変わってきたのではないかという提言もあります。また、学校ホームページに作り込み方からも、風向きが変わってきているのではないかと筆者は感じているようです。
女子校の算数が難化
対照的に女子校の算数入試が難しくなったと分析しているようです。
特に記事内では女子学院と豊島岡女子を挙げています。
今までは一定難易度の問題を素早く正確に解く処理能力が求められていたが、今年は思考力が必要な応用問題が盛り込まれるようになったと分析しているようです。
これもやはり大学入試からの逆算の影響ということなのでしょうか。
実際に入試問題を作成・採点していて感じたこと
自校は特に影響ないだろうということで例年通りの作問をしていましたが、特定の試験日程で例年と違う手応えを感じました。
当初は少子化によって中学入試に挑戦する生徒の絶対数が減ったためだろうと想像していたのですが、一方で受験率は上がっている、という記事を見かけた記憶があります。
とはいえ、自校の偏差値帯を考えると、やはり世の中の動向の影響は免れなかったようだという結論に至りました。
次年度の入試問題の作成についても少し考えさせられてしまいました。
話を戻すと、今回、この記事で書かれていることはある意味では異変ではなく必然だと感じます。
昨今、大学入試でも思考力について問われる機会が増えました。
これも机の上の勉強だけできる生徒が求められていないということにも繋がるのだとは思います。
女子校の算数が難化したように感じられるのも、思考力という要素をプラスアルファしたから。
男子校の難易度が下がったように感じられるのも、尖った技術やさん的な能力よりも視野の広さを求めるような風潮が広がっているためと考えてしまうと自然なのではないでしょうか。
(もっとも、男子校の易化はこれ以外の要素もあると思っていますが‥)
良い悪いはここでは述べませんし、世の中の流れもあるので何とも言えませんが、受け入れる教員や学校側も、世間も、もちろん各御家庭も、忘れないでほしいのは、知識と思考力は両輪だということです。
知識がなければ思考力は発揮されませんし、知識だけ磨いても思考しなければ意味はありません。
かつては中学高校までは知識を磨く場だった(?)ものが、活用も高いレベルで求められるようになってしまってきているのではないかと感じることがあります。
人間に与えられている時間が1日24時間で平等であることを考えても、子どもたちには少し酷のような気がします。
一方で、世の中の時間の流れ方も圧倒的に速くなっています。
絶妙なバランスが求められている気がしています。
保護者の皆様におかれましては、どうか自分のお子さんの能力や性格をしっかりと把握し、世の中のバランスと照らし合わせて合う学校を選んでいただきたいと思います。
ムリをさせすぎず、かといって甘やかしすぎず、こればかりは縁や運も絡んできてしまうので如何ともし難い部分はあるのですが、子どものせいにも学校のせいにも世の中のせいにもしないで済むことを祈っております。