受験生や保護者向けの記事の2本目になります。
様々なメディアで、受験の体験談や成功談が共有される一方で、逆に失敗談の記事も見かけるようになりました。
私自身が複数の私学で勤務して担任をもち、いろいろな境遇のご家庭と接する機会がありました。
その中で我々教員も、もちろん学校に通っている子どもたちも、サポートして下さっている親御さんもストレスが減るといいなと思い、記事を書いています。
今回の記事は主に勉強面についてです。
なぜ勉強面についてなのか
子どもにはトラブルがつきものですし、学校ではいろんなことがおこります。
そんな中で、学校の勉強についていけなくなり、学校を去ることを選択せざるを得なくなるご家庭も少なくありません。
また、様々なトラブルの根っこの部分で、勉強がわからなくなってしまったことから余裕がなくなり、人間関係が悪化したり、睡眠時間を削りすぎて体調を崩してしまうなどの問題に発展するケースもあります。
様々な私学があり、様々なカリキュラムがあります。
中学校の学習内容の延長で高校課程の内容も先取りする学校もあります。
そもそも学校は(特に受験までして入学する私学であればなおさら)勉強をするところです。
もちろん、学校は勉強だけでなく、部活動や人間関係を通しての成長をする場でもあります。
今回は合格した時点から気をつけていただきたい点をまとめていきたいと思います。
合格後から入学まで
合格のご褒美の「スマホ」には注意!
まずは合格しなければ話は始まりません。
特に中学受験は「親の受験」「親子の受験」とも言われるように、親の影響も大きいです。
もちろん子どもが主体的に学校を選択し、すすんで勉強をして合格するご家庭もあると思います。
逆に、親の意見が強く、アメとムチを使い分けながら取り組むご家庭もあるように思います。
受験勉強の途中で気持ちが折れかけて、モチベーション回復のためにご褒美を提示するご家庭も少なくないでしょう。
その中でも特に注意したいのがスマートフォン。
もちろん塾の行き帰りその他で使いこなしているお子さんもいらっしゃいますが、ゲーム依存、ネットトラブルもありますし、大人でも炎上してしまうこともあるわけです。
ご家庭できちんとルールを決めて活用されるのが良いと思います。
あまり書きたくはありませんが、実際にあった事例をご紹介します。
この真逆のことが起こるとどうなるか。
結果だけを列挙すると。
スマートフォン1台で起業も出来てしまうような時代です。
我々人間が、機械に使われるのではなく、機械を使いこなす側でありたいものです。
もちろん教員もですが、保護者もお子さんと一緒にネットリテラシーを高めて欲しいと思います。
話を戻すと、うまくいっているご家庭の合格のご褒美は「ディズニーランド」「USJ」や「温泉旅行」のような「単発」のものが多い気がします(後までズルズル引きずらないご褒美)。
入学前課題は要注意!
合格してから遊びすぎて、入学前課題をおざなりにしていた・・・
というご家庭も一定数いるようです。
中学受験は、子どもの年齢や発達段階も考えると、とても大変なことだとは思います。
しかし、その反動で合格後に緩んでしまっては本末転倒です。
合格して終わりではなく、あくまでも合格はスタートラインにすぎないことを忘れないようにしてください。
学校側もこの入学前課題のできを見ていろいろ判断することも少なくありません。
特に伝統や実績のある学校であれば、例年のできと比較できてしまいます。
学校によっては、中学校の勉強はこういうものだ、というメッセージ性をこめているところもあるように思います。
合格後から入学前までは、それなりに時間はあると思うので、中学生の勉強スタイルが確立していなくても、時間をかけてじっくり取り組むこともできるわけです。
勘のいいご家庭は入学までのこのタイミングで、小学生の勉強スタイルから中学生の勉強スタイルへの移行に取り組んでいるように思います。
勉強スタイルについては後述します。
中学入学後~高校進学まで
中学生の勉強スタイルを早く確立する!
まず注意して欲しいのは、中学校の(特に私学の)勉強は、中学受験の勉強方法ではいつか太刀打ちできなくなるタイミングが来る、ということです。
少し一般論になってしまいますが、以下のような構図です。
このあたりに落とし穴があると思っています。
もちろん塾は「対価(お金)をもらって合格させる」のが仕事ですから、子どもの実態に合わせて苦手の対策をしてくれたり、宿題を考えてくれたり、アドバイスをくれたりします。
合格してこの塾という存在がなくなった途端、どうやって勉強して良いのかを見失ってしまう子どもが少なくありません。
親のほうも、中学生になったんだから勉強は自分でやって、というふうに子ども任せにしがちです。
もちろん、二人三脚で乗り切った中学受験は親御さんにとっても大変だったことでしょう。
しかし、子どもだけではなく、親も合格がゴールなのではなくスタートなのです。
それまではリビングで親と一緒に勉強をしていたのに、自室を与えれば自分で勉強するだろうと考えている親御さんも少なくありません。
塾だけでなく、親御さんもいきなり子どもの手を放してしまうと、高い意識をもっていたり、明確な目標を見失わずにいるお子さん以外は、自力で勉強するのはかなり厳しいと思います。
学習する内容が広くなるので必然的にスピードが上がります。
効率的に勉強することも必要です。
例えば「先生の話を聞きながら大切なところをメモする(ノートに書く)ことができる」という基本的な授業を聞く姿勢が身についているかというのも大切になってきます。
家に帰って時間をかけて復習すればいいや、という考えではなく、授業内で出来る限り定着させることがどれくらいできるかが時間短縮につながります。
中学生になると定期試験も始まります。
広い試験範囲をどのように勉強するのか、計画を立てる必要も出てきます。
この点に関しては、親御さんが手伝っているご家庭もありますし、塾に通ってペースづくりを手伝ってもらっているご家庭もあるようです。
どうにもならないのは下2つです。
1つ目の「解答を導く過程が長くなる」ということに関しては、学習した内容を1つ1つ確実に定着していないといけません。
それまでに学習した内容を組み合わせ、論理的に思考することが求められています。
忘れてしまった内容にもう一度取り組み、論理をつなぎ合わせて解答までの過程を再現することができるか。
中学受験では「捨て問すればいい」という考え方もあったかもしれませんが、普段の学校の勉強に「捨てればいい」という考え方はありません。
そもそも、大人でさえも苦手なことに取り組むのにはエネルギーがいるわけです。
小さな積み重ねですが、中学生までの勉強では「苦手から逃げない」ことが必要です。
この積み重ねを怠り、苦手から逃げ続けると、すぐに置いていかれてしまい、学力不振がきっかけで学校に去る選択をしなければならなくなることにもなりかねません。
2つ目の「抽象的な内容を扱うようになる」ということに関しては、国語の文章もそうですし、理科の原子・分子などの目に見えない物質を扱うのもそうです。
最も注意が必要なのは数学です。
受験勉強で鶴亀算を始めとして様々な計算を練習してきたと思います。
中学数学ではそれを方程式に落とし込みます。
かつて自分が勤務していた学校にもいましたが、今までの受験勉強のやり方で解けるからといって中学校の方程式のやり方を使わずに、鶴亀算や旅人算などの受験勉強のやり方で乗り切ろうとした生徒がいました。
一年生の1次方程式や二年生の連立方程式であれば、たしかに旅人算、相当算、差集め算や鶴亀算を使えばどうにかなることも少なくありませんが、方程式や文字式を使わなければできない計算も出てきます。
例えば高校生の微分・積分もベクトルの計算も、中学受験までの勉強内容では置き換えられないのです。
たまたま中学生の簡単な方程式だから、中学受験までの勉強方法で置き換えて無理やり考えることができただけであって、方程式の考え方がわからなくていいということにはなりません。
むしろ中学までの内容は、高校の準備段階に過ぎません。
以上のように、中学生の勉強方法が確立しないと大変なことになります。
悲惨なのは、受験を知識の「インプット」と「アウトプット」で乗り切ってきたご家庭。
数学は問題パターンも暗記して乗り切ろうとするのですが、中学数学のパターンは多岐にわたりますので、解法暗記ではついていくことができません(相当な労力をかけて暗記する子もいますが)。
確かに最初の頃は、解答を丸覚えして乗り切ってしまう生徒もいるにはいます。
しかし、勉強の取り組み方としては「小学7年生」になってしまっていて、「中学1年生」になれていない状況です。
入学直後のご家庭のサポートは必須!
上の項目でも少し書きましたが、中学生になったからといってご家庭ですぐに勉強を見なくなるのはとても危険です。
自分の勉強部屋を与えたから大丈夫というのは親の考えでしかありません。
ちょっと前まではまぎれもなく小学生だったわけですから。
入学して肩書きが中学生になったからといって、いきなり中学生の勉強方法ができるようになるのは稀なことだと思います。
もちろん、中には授業中で全て理解してしまうような手のかからないお子さんもいます。
一度間違えたことは二度は間違えないというようなタイプのお子さんもいます。
志望校にギリギリ合格したから入学後も苦労するかといったら決してそんなことはありません。
もちろん、余裕をもって合格したから大丈夫ということもありません。
実際に、中学入試で合格最低点をとった生徒が卒業するときには学年の上位10%まで伸びてた例も見てきました。
もちろん、中学入試の最高点をとった生徒が卒業するときには学年の下位5%まで落ちた例も知っています。
全ては中学校の勉強に対応できるか(中学生の勉強をより早い段階で確立できるか)だと私は思っています。
高校入学後~大学進学まで
上の項目で小学生の中学受験の勉強スタイルから中学生の学習スタイルへの移行の話をしてきました。
同じことが高校についてもいえます。
高校では更に広い内容を、更に速いスピードで扱います。
抽象的な内容も増えますし、計算過程も場合分けが必要になってきます。
そもそも、単純な計算問題ですら恐ろしいほどの計算力を求めてくる問題もたくさんあります。
高いレベルでの論理的思考力も求められるのです。
中高一貫校では、中学3年生の最初または途中から英語や数学を中心とした一部教科で先取り学習が始まる学校も多いでしょう。
本人たちは大変かもしませんが、高校に入ってから全ての教科でいきなりハードルが上がるよりも本当は楽なはずなのです。
このハードルをうまく飛び越えた生徒が、高校でも伸びていきます。
量や質の話をすれば、国語や英語の長文の分量もそうですし、日本史や世界史の暗記事項の多さも挙げられます。
記述問題も20字程度で済んでいたものが100字~120字の長めの記述も出てきます。
社会では400字の記述などもありますね。
独特の定義や計算というところでは理系科目が多いかもしれません。
上記に挙げた関数もそうですが、何よりも場合分けをしてそれぞれの場合について適切な解答へと到達しなければいけなくなります。
もちろん、中学数学でも正方形内の動点の移動と面積の問題とか、y=ax^2でaが正の場合と負の場合で場合分けするなどの簡単な場合分けはありますが、その比ではありません。
そしてこういうものに対応できるかどうかが、1つ目の大きな進路決定である「文系・理系」の選択に関わってきます。
中学生の勉強方法が確立していても、高校生の勉強のハードルを超えられずに「中学4年生」状態の生徒もかなりいます。
高校入試を経験していない一貫校の生徒には一定数この「中学4年生」がいると感じます。
入試というハードルがないため先取りできるメリットはあります。
しかし気持ちの面でうまく切り替えることができずに、中学3年生~高校1年生を6年間の中の中だるみの2年間で過ごしてしまうということです。
逆に、高校入試を経て私学に入学した生徒は、中学で一度ハードルを飛び越え、高校に入学した自覚がそこそこあるので、気持ち的にハードルを飛び越える準備はできていることも多いです。
もちろん、高校入学組も全員がうまく高校生の勉強に対応できるかと言われるとそうでもないのですけれど。
ここまで書いていて思い出したのですが、過去に受け持ったことのある生徒の中には、小学生の勉強スタイルのまま高校生になってしまって「小学10年生」状態で高校1年生の文系・理系の進路選択に臨んだ生徒もいました。
本人も「理屈をどうこう考えるのは自分には無理です。でもただ覚えて思い出す勉強ならいくらでもできます。」と答えていました。
毎回の定期テストも当然赤点で、単位不認定にならないように追試や補習の常連になっていました。
なんとか無事に卒業までこぎつけたからよかったものの、何度も学校を去る選択を考えていた時期がありました。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は教員の採用とは違った観点から記事を書きました。
もちろん、私を含め多くの教員は子どもたちのために日々奮闘しています。
早い段階で声をかけ、対策を講じている先生方も少なくないはずです。
せっかく合格を勝ち取った学校ですから、どうか学校生活もうまく回して欲しいと思います。
今回は主に学習面に焦点をあてた記事でした。
コメント
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