【公立校と私学の違い】国語の先生の学校選び チェックポイント3つ~専門分野編~

転職活動

国語の先生として働きたい!」という想いをもったとき、まずなにから調べますか?

検索してまず出てくるのは、「自治体の採用試験情報」や「私学の求人サイト」が大半です。でも、こういった実際の募集要項を見る前に、ぜひ確認してほしいことがあります。それは「公立校と私学の違い」です。

「国語科」と一言で言っても、その中身はさまざま。「現代文」「古典(古文・漢文)」といった専門分野の分け方や採用枠、採用されてからの指導内容も多種多様です。さらに、小論文や作文の指導も国語の先生に一任される場合もあります。

この記事では、

  • 国語科の「専門科目」の違い
  • 公立校と私学の「採用枠」の違い
  • 小論文指導の実態

を中心に、学校を見る際のチェックポイントをご紹介。

私立中高一貫男子校→公立中学校→現在は私立高校で国語の教員として働いている私が、国語科の視点から「公立・私学の違い」を解説していきます。

公立校から私学、私学から公立校への転職を検討している先生も、是非参考にしてみてください。

この記事を書いた人
猪狩 はな

【2児ママ× 現役国語科教員×ライター!】
持続可能に「好き」を楽しむ生き方をしたくて転職。
▶国語科(専門は古典文学)
▶私立高校講師←公立中学校フルタイム教員←私立中高一貫校講師
▶未経験からwebライターに挑戦
▶2歳と4歳の男児を育児中
キャリアに悩む人の助けになれるような発信を目指しています。

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「専門科目」の違いをチェック

国語科のなかでも、特に教えたい分野がある場合は求人を探す段階で確認しておきましょう。

「国語科」「現代文」「古典(古文・漢文)」どの先生を目指すかによって、採用試験のときに問われる内容も変わってきます。

大学や大学院で専門性の高い分野の研究をしてきた方は特に、自分がどの範囲の指導がしたいか?できるのか?を見極めておくとよいでしょう。就職後の働き方と満足度にダイレクトに関わってくる部分です。

「国語科」

国語科の教員と記載がある場合は原則として国語科の授業全般」を指導するという前提での採用です。中学校では「書写」も含まれます。

「現代文」

評論文・説明文、文学的文章(小説・随想)、詩歌といった「明治時代以降の文章」を指導します。

私学によっては「専門として現代の文章を研究した」「卒論・修論のテーマとした」ことを募集の条件として提示している場合もあります。

「古典」

古典分野は、さらに「古文」(江戸時代までの文章)・「漢文」(古代中国の文語体の文章)にわけられます。

私学によっては「古文」専門・「漢文」専門の先生を募集している学校もあります。古典のなかでも「古文」「漢文」を専門とする大学で教員免許を取得したという方は、こういった専門に特化した募集を探してみるのもオススメです!

採用の枠が違う場合がある

公立校と私学、私立でも学校によってカリキュラムや教員の採用枠に違いがあります。

公立校でも私学でも、教科名は原則として同じなので、シラバスやカリキュラムが公開されている場合はチェックしてみるのもよいでしょう。

公立

公立の中学校・高校での採用形態は「国語」の枠のみです。

高校では社会や理科が専門に分けた採用枠を設けているのに対し、国語は「国語科」での一括採用である点は要注意です。

実際に採用されたあとも、基本的には「国語科」に関わる全てを教える先生として働くことになります。また、学校や学年によっては「文章」に関わる業務は国語科が担当することが多いです。

例えば、以下のようなものも国語科の範囲になります(ただし、高校の場合は「書道」は芸術になるので、国語科の指導範囲ではなくなります)。

(例)

  • 書写の授業(道具の発注や管理、制作物の管理・掲示、展覧会への申し込み等含む)
  • 書き初め(書き方の指導、紙や物品の発注管理、大会への作品の提出・引率)
  • 百人一首(指導、かるたの管理、大会がある場合は運営や引率)
  • 読書感想文(指導、準備、コンクールに出す場合は代表の選出や指導、読んで採点)
  • 作文や志望理由書、課題文などの指導・添削・修正
  • 学年だよりなどの配布プリントの執筆・校正・添削
  • 卒業文集・卒業アルバムの文章指導・執筆依頼・添削・発注

※学校ごと、学年ごと、教科ごとの方針によっても異なります。公立に限らず、上記のものを私学でも担当する場合もありますので、参考情報の1つとして見ていただけると幸いです。


体験談① 通っていた公立高校での担当分け

私が通っていた公立高校では、「国語科」の先生たちの中で専門分野ごとに受け持ちの授業をゆるやかに分けていました

(例)漢文が専門の先生の場合

  • 自分の学年の現代文のうち「理系クラス」のみもつ

   →文系クラスの現代文は、現代文が専門・得意な先生がメインでもつ

  • 専門である漢文の授業は自分の学年+他学年の「文系クラス」のものも教える

先生たちにとっても教えやすく、生徒たちにとってもニーズにあった采配ですよね。今自分が教員の立場になったので余計に、教える側からの目線として「こういう配慮は嬉しいな」と感じます。

体験談② 勤務していた公立中学校での話

勤務していた公立中学校では、「書写」「文法」の授業を学年を一緒にもつペアの先生に割り振っていました

特に書写は実技教科的な側面も強く、苦手意識がある先生は多い分野です。学年担当のメインになる先生は教科書指導に集中でき、生徒たちも「今日は〇〇先生の国語だから、書写だ」と判別しやすいと言っていました。

ただし、公立校は配属される学校は選べず、先生たちも異動で入れ替わります

上記のような「ゆるやかな専門分け」が全ての学校でされているとは限らない上、配属されたときのルールや人員配置がずっと同じとも言い切れないのです。

実際、体験談②では、在籍しているあいだに生徒数減→教員数減に。あっという間に書写も文法も1人で受け持つことになりました。

「書写はどうしても教えられない」「特に教えたい専門分野がある」という方は私学教員の道も検討してみましょう。

私学

私学の教員採用では、学校ごとにどの分野の教員を募集しているかが変わります。

「国語科教員の募集」

公立校と同様、原則として「国語科」全般を指導する教員の募集。

ただし、学校の方針やカリキュラムによっては希望を伝えられる場合もあります。体験談①のような「ゆるやかな専門分け」をしてくれることもあるので、確認してみるといいでしょう。

体験談③ 現在勤務している私学での採用面接

私が現在働いている私学は、要項に「国語科の教員の募集(現代文)」と明記されていました。

現代文を教えるつもりで受験したのですが、面接の際に「専門はなんですか?」と聞き取りが。結果的に、現代文だけでなく、専門分野である古文を含む「古典B」の授業も受け持たせてもらっています。

現代文の授業だけでも充実して授業できていますが、やはり古文の指導もできるとなるとやる気も出て、教材研究も楽しいです!

「古典」の教員募集

原則として「古文」「漢文」両方を教える教員の募集。

今勤務している学校では「古典B」の授業のなかで古文も漢文も教えています。9月は古文分野、10月からは漢文分野……というように、同じ授業のコマのなかで分野が変わり、どちらも1人の教員が教える形態です。

「古文」「漢文」の教員募集

古典分野のなかでも「古文」の先生、「漢文」の先生それぞれの専門にわけた募集の方法です。カリキュラム上で「古文」「漢文」が分かれている学校ではこのような募集方法をとっている場合があります。

私が以前勤務していた私学は「古文の先生」としての採用。中高一貫校だったので、高校単独校の私学とはカリキュラムの組み方も違っていました。以下、中高一貫校についての情報をご紹介します。

募集要項はよく読む・先方にも確認するのが吉

「古典分野の教員を募集します」と銘打って、注意事項のなかで「古文を中心として全般指導可能な方」と追記している私学募集も見たことがあります。

専門分野だけを特化して教えたいという希望がある方は、学校側にあらかじめ確認しておくことをオススメします。

中高一貫校の教員募集

中高一貫校では、中1~高3までの6年間を通してのカリキュラムが組まれます。

そのため、高校分野の先取りが前提で各教科の進度が決定。教員が指導する内容もそれによって変わります。

(例)

【現代文の場合】

現代文の学習は螺旋階段型(読解するための基本的な技能は同じだが、文章の難易度がだんだんあがる)→文章の難易度を前倒しする。中学生段階から高校生レベルの文章に取り組ませる、漢字や語句を先取りして学ぶ、など。

【古典分野の場合】

主に知識に関わる部分を前倒しにする。

  • 古文…読解+古典文法(助動詞の種類や活用、係り結びなどの基本的な文法のルール)
  • 漢文…短めの文章+基本の句形・漢字の読みや意味

中学生に古典を教えるとして、同じ作品の授業でもストーリーを押さえられればいいのか、文法的な説明までできるように指導するのかによって授業の中身も変わりますよね。

中高一貫校で指導する場合、中学生の授業は「より高度な内容を分かりやすく伝える」必要があります。高校生への授業では、基礎基本は押さえたうえで、「さらに興味がもてるような+α」「大学受験に向けた応用」を考える場面が増えるでしょう。

体験談④ 私立中高一貫校で「古文の先生」として勤務したときの話

「古文の先生」として採用された私立中高一貫校での話です。

  • 中学2年生に「古典文法」の授業(一般的な高校だと高校1年生が習う内容)
  • 高校2年生に古文の授業(教科書の読解+α)

という受け持ちで教えました。

中高一貫校では高校受験しない生徒のほうが多いというのもあり、中学校2~3年生に古典文法のみを教え続けるのにとても苦労した覚えがあります。

逆に、高校生の授業では「古典文法」は学習済みなので、復習はするけれど読解メインでガンガン進めていけるという利点もありました。追加での演習や、他の作品との読み比べなどの課題を出す時数的余裕もあり、教科書から離れた作品の魅力も伝えられたと思います。

  • 専門分野を極めて、より高度な内容を指導してみたい
  • 中高6年間を通して継続的に指導したい

そんな想いがある方は、中高一貫校の募集を探してみるのもいいかもしれません。

小論文指導にも差がある

国語科の先生のもとにやってきがちな指導の1つとして、「小論文指導」があります。小論文だけでなく、志望理由書や課題作文といった「文章」系は国語の先生が見るという印象がありますよね。実はこれも、学校・学年・教科ごとの考え方の差が出る部分です。

  • 国語科の先生が全てチェックする
  • まずは担任の先生が見て、そのあと国語科の先生が見る
  • 原則として担任の先生が見る
  • 授業を受け持っているクラスの生徒のぶんは見る

私自身は上記の全てのパターンに対応したことがあります。

国語科の先生、負担と責任どこまで背負える?

一番大変だったのは、言わずもがなかもしれませんが「国語科の先生が全てチェックする」パターンです。

体験談⑤ 志望理由書の添削・指導200人分を担当した話

これは公立中学校勤務3年目に受験生の担任をしていたときのこと。5クラス・200人いる学年の全員分の志望理由書の添削を「国語科だから」という理由で私1人に任されたのです。

あの時は本気で「今日は家に帰れない……」と思いました。当然その日は切り上げて家には帰りましたが、プレッシャーはすごかったです。

志望理由書なので、私のミスや指導不足が生徒たちの受験に関わりますし、「中には数行しか書けていないものもある200枚」というのはとにかく途方もなかったです。

その200枚を一度見たあと、それ以降は学年主任の計らいで「まずは担任が見てから、最終チェックは国語科」という形になり、一安心した覚えがあります。

公立中学校の場合、学校の規模にもよりますが国語科が学年に1人(あるいはそれ以下)という場合も。3年生担当の年は文章添削系の仕事は一気に増えます。

国語科の先生ではなく「担任の先生が見る」良し悪し

「原則として担任の先生が見る」場合だと、国語科分はゼロ。負担は激減します。

大学受験を控えた高校生をもっていると、個人的に国語の先生のところに「アドバイスください」「添削してください」と何枚もの作文・小論文が殺到することも。その対策として最初から「担任に見せる」と取り決めている学校もあるのです。

ただ、「担任の先生」がみんな小論文や作文の指導の知識があるか?となると難しい部分がありますよね。理系クラスの担任をしている理系の先生は、ご自身は小論文を書いた経験がなくアドバイスは難しいと話していらっしゃいました。生徒としても、「やはり国語科の先生からコメントをもらいたい」という声が出る場合も。

国語科の負担は減るけれど、担任の先生の負担は増えているわけなので、このあたりのバランスは課題だなと感じます。

国語科の先生であっても、小論文や作文の指導はあまり得意ではないという方もいらっしゃると思います。募集要項には載らない部分かと思いますので、視点の1つとしてもっておくといいかもしれません。

「どんな先生になりたい?」が学校探しの第1歩

「国語の先生」といっても、専門分野・指導内容はさまざま。

ご自身が教育のなかでもなにを大事にしたいか、どんな風に生徒と関わっていきたいかにも左右される部分かと思います。まずは、自分がどのような指導をしたいのか、どんな先生になりたいのかを明確化したうえで、公立・私学・中高一貫校それぞれの特徴を確認してみましょう。

この記事が、自分の「好き」を生かして楽しく働ける職場と出会うための一助になれば幸いです。

この記事を書いた人
猪狩 はな

【2児ママ× 現役国語科教員×ライター!】
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