関東エリアの受験事情は全国的にも特徴的だと思います。
受験戦争という言葉は全国的にありますが、地方都市と首都圏エリアではその密度は違いますし、そもそも受験戦争とはほとんど無縁‥という地域もあるように感じます。
そして高校受験は進学希望者のほとんど全員が経験するわけですが、中学受験はまた違った世界です。
もちろん中学受験に対する賛否両論はありますが、教員として私立学校で働くことを考えるのであれば、どういう内容の勉強をどのように行ってきたのかを知っているのと知らないのとでは、入学後に自分が受け持つ生徒に対する理解度に差が出ます。
東京都の私立学校では、高校からの生徒募集を停止し、完全中高一貫を掲げる学校も増えています。
私立学校は良くも悪くも中小企業なので、生徒が集まらなければ経営的に死活問題に発展するので、この判断も経営判断の一つと言えるでしょう。
少子化に伴って生徒の囲い込みをしようとする学校が出る、入学しようと必死になるご家庭が増える、の循環が加速していくのかもしれません。
今回の記事では、地方出身者からすると意外に感じられるかもしれませんが、関東エリアではそこそこ当たり前の内容を記事にしていきたいと思います。
中学受験の準備に何年もかける
インターネットなどで調べても、一般的に中学受験の準備は小学校3年生から4年生にかけて始めるというサイトが多いように思います。
「二月の勝者」がドラマ化されたことからもわかるのではないでしょうか。
そもそも、塾関係の年度の切り替わりは学校のように4月ではなく、2~3月(前年度の受験が終わる頃)なので、小学校3年生の3学期から中学受験のための勉強が始まるというパターンが多いのではないでしょうか。
もちろん、受験勉強が本格化するのは小学校5年生からという話もあり、そこからでもまだ挽回することは可能という話もあります。
もともと地頭のある子が6年生の1年間で準備したという話も無いわけではないので、個人差はあるようにも思います。
月々の塾代の金銭的な負担、塾への送り迎えやお弁当などの準備などの物理的な負担、家での勉強の確認やメンタル面のケアなど、家庭の負担は決して小さくはありません。
子ども本人にとっても、ご家庭にとっても、大変な思いをして乗り越えて勝ち取った中学受験の合格。
想いが強いからこそ、学校に対しても協力的であることも多かったり、反対に高い要求をされることもあるのかもしれません。
平日開催の学校説明会に小学校を休んで参加することも
特にここ数年、私自身が驚いていることなのですが、平日、通常は小学校があると思われる時間帯の学校説明会に親子で参加しているご家庭が増えた気がします。
親子での参加が数えるほどであれば、何かの行事の代休かなにかなのかとも思うのですが、意外にそうでもなさそうなんですよね‥
東京都内の私立中学校の数を検索すると180校という数字を見かけたこともあります。
その中から、自分の学力レベル帯だけでなく、校風も含めて合う学校を探すだけでもなかなか大変です。
もちろん、効率的に私立学校の情報を取得するために、塾に通っているご家庭も一定数いると思います。
ただ、塾を通して得られる学校の二次情報ではなく、やはり自分で足を運んで学校の施設・設備を確認したり、校長先生や現場で働く先生方の様子を見たり、校内に貼られている掲示物の様子を肌で感じるのは、全然違います(これはもちろん、採用試験を受けに行く我々教員側にも同じことが言えるわけですが)。
そのために、平日開催の私立学校の学校説明会に、小学校を欠席して親子で学校見学に参加するのです(もちろんその是非はあると思いますが)。
そういう労力をかけて私立学校を選択しているため、本人も、保護者も、私立学校に対する思いは並々ならぬものがある場合が少なくありません。
ご家庭によっては、本人よりも保護者のほうが、私学に対する思い入れが強い(時に強すぎる)こともあったりするように感じてしまいます。
中学受験の戦略から見えてくる背景の情報はたくさんある
複数の受験日程を設定している私立学校のほうが、圧倒的に多いです。
当然、生徒を十分に集めるためなのですが、人気校は複数日設定する必要がありません。
同一試験日に日程が集中したとしても、選んでもらえるわけですから。
そして、同じ学校でも、受験日によって偏差値が変動します。
2/1など人気校の受験日と重なる日に受験日を設定している日の偏差値は低いけれど、それ以外だと同じ学校でも偏差値が上がったりするわけです(競争率が上がるため)。
こういう状況を的確に分析し、できるだけ自分が行きたいと思う学校の合格率を高めるために、日程によって受験戦略を立てたりします。
何日の●●中学に合格した場合は、翌日の受験はチャレンジ校の▲▲中学にするとか、合格を1つも確保できていない場合は★★中学を受験するとかです。
当然、学校に応じて受験料を納入する期限も設定されていたりするので、前日までの結果によっては受験しないかもしれない学校にも受験料を払い込んだりすることもあります。
どのような学校群の中から選択肢として自分が勤務する学校が選ばれたのか。
それによっても生徒の状況が透けて見えることがあります。
自由な校風を掲げる学校をたくさん受験してきたとか。
その子にとってチャレンジして受かった学校だったのかとか。
もっと上位校を受けていたのに、不本意ながら通うことになったのかとか。
入学後の生徒のモチベーションの把握に役立つこともあったりします。
おわりに
今回は首都圏の中学受験の一端を少し紹介してみました。
高校までは地方で暮らしていて、大学進学とともに上京して首都圏で教員になるという方も一定数いらっしゃると思います。
その際、私学で勤務することになると、自分の子ども時代とは全然異なる経験をしてくる生徒と出会うことになるかもしれません。
思っている以上に中学受験が及ぼす影響はいい意味でも逆の意味でもこの年代の子どもたちにはあると思っています。
ぜひ、背景事情も考慮した上で、日々の指導にあたってくださいね。
そして、私立学校間のパワーバランスも考慮しながら、自己分析も踏まえて、転職活動を成功させてくださいね。
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